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「人を雇う」を考える ひとまずの最終版

2010年04月09日

スタッフの採用をスタートして2年。これまで4人、スタッフの入れ替わりがありましたが、その4人目、昨年8月から働いてくれていたU君が3月で退職しました。“4度目の正直”(?)を期待していたのですが、残念ながら……。
ひとまずリクルーティングをお休みすることにしたいま、採用が失敗した要因を振り返ってみたいと思います。

失敗要因はさまざまですが、3つに大きく分けられると考えています。

要因1.求める人材像(理想)と現実のギャップ

・理想

採用の際、求める人材像について、
(1)パーソナリティ(個性)に富んだ未経験者
(2)リベンジしたい人
(3)根性のある人
という3点を重視しました。

まず、(1)の「パーソナリティ(個性)に富んだ未経験者」を掲げた背景から見ていきます。考えた仮説は以下の2つ。

・パーソナリティがある → 税理士の一般的な業務では、差別化が非常に困難。「個性的である」というのは、単純なようで、意外に大きな差別化のポイントとなるのではないか。
・未経験者 → 「差別化」をはかる意味では、下手な経験者より、業界の常識に捉われずに物事を考えることができる未経験者のほうがベターではないか。

次に(2)の「リベンジしたい人」については、かつての私がそのタイプだったということが挙げられます。がんばりたいけれど、何をどうがんばっていいのかわからない。世間に認められていない。そんな人に「働くチャンス」を与えたいと考えたのです。

最後に(3)の「根性のある人」は、学生時代から後輩にも言われていたことですが、私がとにかく「厳しい」人間であるということに尽きます。仕事ができる、できない以前に、まずは、その厳しさに耐えることができる人が大前提となりました。

・現実

ところが、この3つの理想には“両刃の剣”という側面がありました。

たとえば、(1)のパーソナリティを重視した結果、実際に面白い人材が来てくれましたが、税理士の基本的な業務をきちんとこなせる者が非常に少ないという結果に終わりました。基本はパソコン処理なので、誰でも簡単にできるのではと思っていたのですが、大半のスタッフがここで苦しんだようです。

(2)のリベンジについては、いわゆる「世の中を見返したい」という思いこそが、何よりも強いパワーになると考えていました。ところが、一方でプライドが邪魔になるケースが多かったようです。
本来の意味で「見返す」ためのがむしゃらさがなく、言ってみれば“俺様(自分の)スタイル”で「見返す」という中途半端な姿勢が見受けられました。正直言って、イチ(ゼロ)から仕事を教わる立場で自分のスタイルを主張されるとは思わなかったのですが、「プライド」というものは予想以上にやっかいなモノだ、と痛切に感じました。

結論として言えることは、最初から理想の人材だけを追わずに、まずは実務のできる人間を雇い、事務所の基盤を作ることが先決だったのではないか、と。その上で、将来的にこれら3つのポイントを考えながら採用していくのが現実的であったと考えています。

要因2.予想以上に上がらなかった仕事の成果

単なる税理士業だけでは立ち行かなくなるという業界の現状を踏まえ、スタッフには、いわゆる税理士業務以外の任務に幅広く挑戦してもらいたいと考えていました。

そこで、
(1)税理士の基本業務、会計ソフトの入力と申告書システムの入力までを3か月で修得してもらう
(2)視野を広げるため、読書やFPの勉強に取り組む
(3)自分自身、そして事務所の存在を多くの人に知ってもらうために、毎日ブログを更新
(4)経営者の気持ちを早く理解してもらうために、積極的に顧問先に帯同させる

というスタンスを決めました。

結果はそれぞれ以下の通りとなりました。

(1) → ほとんどのスタッフが2~3か月で基本的な作業は覚えることができた。しかし、最終的な詰めが甘く、70点程度はとれても、それ以上の精度が上がらなかった。
(2) → とにかくあらゆる種類の読書、勉強をさせたが、身につくまではいかなかった。逆に業務を忙しくさせてしまった。
(3) → ブログ更新についても、業務の忙しさが増した割りに効果が上がらなかった。
(4) → 早くから厳しい経営者に接することができ、彼らも考えさせられることが多々あったようだが、具体的にどう影響があったのか、目に見える形で確認はできなかった。

一言でいえば、いろいろやらせすぎた感はあります。オーバーワーク気味であることに気づいて以降はかなり業務を絞ったのですが…。また、未経験者だったゆえに、基本的な簿記の仕組みや業務の正確さを徹底することができず、かえってこちらの足が引っ張られる結果となりました。

要因3.そもそもの採用動機の見誤り

いま振り返ると、“単なる従業員ではなく、事務所を継いでくれる人材が欲しい”と考えたのが失敗の始まりだったと思います。
当然ながら、独立した際は人を雇える余裕もなく、雇える器量もないと自覚していたため、人を雇う気は全くありませんでした。しかし、多少余裕が出てきた2年前に後継ぎぐらい欲しいと考えたのです。
一般的には、業務上の必要性から人を雇うものですが、2年前に当事務所で人材が必要だったかといえば答えはNO。せいぜい週2日のパートさんで充分でした。

ポジティブに考えればじっくり仕事を覚えられる(教えられる)余裕のある環境だったともいえますが、現実的には週5日8時間の業務が埋まらず、3か月目ぐらいから明らかに従業員たちがダレてしまっていました。
業務をスタートして、3か月目以降の伸びが感じられなかったのはそういった緊張感のなさも主因になったと考えています。

ここまでいろいろと書いてきましたが、当事務所で働いてくれた4人は一般的な会社員のレベルから考えると、かなり健闘していたほうだと思います。それを生かす環境を与えられなかったのはひとえに私の責任にほかありません。また、後継ぎという意味で、現状で助けてもらっているパートさんよりかなり厳しく接したことも、最終的には彼らが予想以上に精神的に追い込まれる結果になったようです。

結論――反省点をいかに次につなげていくか…

新しい人材を採用したおかげで、私個人としては仕事のモチベーションもアップし、クライアント増につながりました。ただし、人を育てるという意味では完敗に終わりました。とはいえ、これで終わりにするのではなく、とりあえず今年は採用に関してかけた投資の回収に専念し、来年またチャレンジしたいと考えています。ちなみにインターンは引き続き募集していく予定でいます。今回の失敗をいかに今後に活かしていくかが大事だと考えています。

仕事でも採用でも、成功するための絶対的な法則はありません。ひとつあるとすれば、成功するまでやることではないか、と。執着心といってもいいでしょう。
採用についてはまさに乗り掛かった船。あきらめずに執着していきたいと思います。

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