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70点主義の目標達成術

2012年03月02日

目標設定は緩く、実行はスピーディに――五島流目標達成術

書店に行くと、「目標管理術」「夢のかなえ方」といった類のビジネス書が溢れています。これだけ似たような本が出ているということは、相応のニーズがあるのでしょう。ですが、実のところ私はそういった本はあまり好きではありません。
あくまでも私見ではありますが、こうしたハウツー本を参考に、「目標をきっちり立てて、100%達成せねば!」と気負う人ほど、意外にも挫折してしまうケースが多いように感じるからです(無論、キチンと達成している方もいらっしゃるとは思いますが)。

当然ですが、目標とは実行してナンボのものです。
行動に移せないような目標(高い、難しい、曖昧、現実的ではない、など)を立てても意味がありません。よって、私の場合、誤解を恐れずに言えば目標は緩く(曖昧とは違います)設定し、立てたら即実行。100%達成できなくても気にしすぎないというスタンスを貫いています。
「そんないい加減でいいの?」という印象を持たれるでしょうか? ですが、今の世の中は変化のスピードがめまぐるしく、細かいところまでこだわって目標を掲げても、すぐに方向性を変えなければならないような事態もありえます。
その意味でも、経営者自身が決めさえすれば、すぐに行動に移せる個人事業主や中小企業にはメリットがあると考えています。

私なりの目標設定のプロセス

では、早速、私流の目標設定から達成までの流れをご紹介しましょう。プロセスは、以下の4つ。
①目標の具体化
②取捨選択
③実行、そして習慣化
④70点主義
順を追って、ポイントとコツを解説していきます。

①目標の具体化

“目標設定は緩く”と書きましたが、先にも述べたように、曖昧とは意味が異なります。カッコいい、見栄えのいい目標でなくてもいいので、あくまでも具体的に明確に立てることがポイントです。
目標設定というスタート地点がボンヤリしていたのでは、何から始めればいいか分からないまま、結局何も実行に移せなかった、という結果になりかねません。
では、目標をよりリアルなものにするにはどうすればいいのか。食品スーパーを例に挙げ、経営者の悩みの一つである「売上」に関する目標設定について考えてみましょう。

「売上を上げる」――勿論これは最終的な目標ではありますが、これをそのまま目標に掲げてはいけません。
「売上を上げる」ために、自分に何ができるのか、何をすればよいのか、をより具体化していきます。単純に思いつくままに挙げてもいいのですが、システマティックに細分化していくとアイデアが出やすいと思います。
例えば、売上を構成するのは何かというと、売上=客単価×客数。よって、売上を上げるためには(1)客単価を上げる、(2)客数を増やす、のどちらかの達成が必要となります。これだけではまだ曖昧ですので、2つの要素をさらに具体化、細分化していきます。

(1)客単価を上げる
①商品の種類を増やす
②高額な商品を増やす
(2)客数を増やす
①新規顧客を獲得する
②既存顧客のリピートを狙う

まだ、曖昧です。もっともっと具体化していきましょう。

(1)客単価を上げる
①商品の種類を増やす
(イ)青果を増やす
(ロ)肉、魚を増やす
(ハ)その他を増やす
②高額な商品を増やす
(イ)有機野菜を増やす
(ロ)ブランドの肉、魚を増やす
(2)客数を増やす
①新規顧客を獲得する
(イ)いつもより広い範囲に広告を撒いてみる
(ロ)営業時間を延ばす
②既存顧客のリピートを狙う
(イ)スタンプカードを作る
(ロ)企画を増やす

いかがでしょうか。漠然としていた「売上を上げる」を、三段階に分けて具体化していくだけで選択肢がグンと広がります。自分にとって「できること」「できないこと」が明確になり、最終目標の「売上を上げる」ための中間目標も明確になります。
ここでの注意点は、あらゆる可能性を考えてみることです。無論、次のプロセスで取捨選択をしていくわけですが、この時点では一見実現不可能だったり常識外れだったりするものでも切り捨てないようにしましょう。そこは厳密ではなく、“緩い”スタンスでOKです。どんな小さな可能性でも頭の片隅に留めておけば、いつかどこかでそれを実現可能にするヒントを見つけることができるかもしれないのですから…。

②取捨選択

目標を具体化できたら、そのなかでも、実現できる可能性が高いものを選び、精査していきます。
ここでのポイントは、無理なくできる範囲で設定することです。中小企業の場合、大企業のように「ヒト」「モノ」「カネ」が潤沢でないケースが大半です。例えば、広告を大々的に打っても、一回こっきりで予算オーバーとなれば、効果がいまひとつでも途中で断念せざるをえません。そんな事態に陥らないよう、金銭的にも時間的にも無理のない目標にすることがポイントです。

実現性を高めるには、数値化の考え方を盛り込むのも手です。例えば、「品数を増やす」だけでなく「品数を10%増やす」、「企画をなるべく多く出す」ではなく「企画を月2回以上出す」といった具合です。数値化することによって、起こすべき行動が明確になりますし、後でどれくらい達成できたのかを振り返ることもできます。
ただし、あまり数字に拘り過ぎると完璧主義のジレンマに陥りがち。形(数字)だけは達成して中身が伴っていない…ということも。ケースバイケースで柔軟に(=緩く)考えていきましょう。

③実行、そして習慣化

目標を選択&設定したら、とにかくすぐ実行に移すことが大事です。ここだけは緩くのんびりしていてはダメです。「鉄は熱いうちに打て」というように、目標も思い立った瞬間が最もモチベーションが上がっているはずです。スピーディに行動すればするほど、目標達成の確率も高まるのです。
逆になかなか手がつけられないようであれば、②の取捨選択のステージで実現不能な目標を選んでしまった可能性もあります。私の場合、2ヶ月以内にまったく手がつけられないようであれば潔く断念することにしています。
また、実行したら日々、習慣化させていくこともポイントです。何も考えなくても自然と行動に移せる状態になったらしめたもの。日々継続して実行していくことで、目標達成のための努力がいつの間にか自然体になっているはずです。

④70点主義

意外に感じるかもしれませんが、行動に移した結果が思わしくなくてもくよくよしすぎない。これも目標を達成していく上でのポイントです。大企業のように株主に文句を言われるわけでもないですし、四半期ごとに進捗率を問われるわけでもないのですから。
長い人生、目標にチャレンジするチャンスは限りなくあります。その年に達成できなかった目標は設定の時点で無理があったのかもしれません。あまり自分を責めずに、しかしだからといって忘れるのではなく、来年に繋げていく。とにかく、めげずに毎年継続していくことがなにより大切です。
試行錯誤をしながら、最終的な目標達成への道を探っていきましょう。

蛇足ながら…最後に申し上げておきたいことがあります。それは「目標と目的」は違うということ。仕事における目的と目標を履き違えると、会社としての方向性、経営者としての歩むべき道を誤りかねません。私が常に意識しているポイントでもあり、両者の違いについては2006年のコラムで触れています。よろしかったら読んでください。

「目標」と「目的」の違いとは? – 前編 –
「目標」と「目的」の違いとは? – 後編 –

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