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働きながら税理士資格合格を目指す人を応援するプロジェクトを始動します

2022年07月30日

インターン制度をブラッシュアップした応援企画を再稼働

独立20周年を迎え、前回のコラムではこれまでの失敗や試行錯誤について振り返り、なんとか右肩上がりの売上を達成してきた背景についての分析についても綴ってみました。今回は、こうした自身の経験値をこれからの世代に還元できればと、スタートした新たな取り組みについて紹介します。

題して「税理士試験サポートプロジェクト」。対象は税理士を志望し、勉強している方。当事務所への就職採用を前提にインターン(給与支給)にて実務経験を積みながら、税理士試験に合格できるようサポートする奨学金制度になります。

なぜこうしたプロジェクトをスタートしたのか。1つには近年では、資格取得のための勉強に集中したくとも、奨学金の返済のため、大学卒業後も意に沿わぬ就職先であっても、働かなければならない方も多いと聞きます。 

また、インターン制度自体は、当事務所では2010年より開始。最後のインターン生が来た15年までで約30名の大学生や社会人が当事務所で学びました。税理士業界では先駆け的な取り組みだったと思います。 

もちろん約30名すべてがうまくいったわけではありませんが、飲食店に勤務していた30代男性が約半年間の当事務所での勉強期間を経て税理士試験に合格。大手小売店チェーン勤務から一念発起し、税理士ではないですが社会保険労務士に目標を変え、見事に合格した女性もいます。 

ただし、近年、受け入れは継続していたものの応募は減少。新しい試みを始めるに当たって、「働きながら資格取得が難しくなっているのでは」という推論も交え、減少の背景、業界を取り巻く環境の変化を自分なりに分析してみました。

働きながら税理士資格を目指すのが困難になっている理由とは

一つには、大手人材採用会社がインターン事業に本格的に参入したことがあります。給与を支給するインターン制度を実践する企業も増え、税理士志望者に限らず、就職先選定の基準として大手志向が進んだことも影響しているのではと考えています。

2つ目の理由として、税理士の受験者数自体が減っていることが挙げられます。
受験者数の推移を見ると、2005年の56314人をピークに、12年では約48000人、21年に至っては約28000人にまで減少。同じ士業では弁護士についても12年が11265人に対し、21年は3754人。ただし、公認会計士は監査業務の厳格化といった時代の流れを受け、業界として会計士増に取り組んで影響もあってか、1213573人に対し、21年は14192人。とはいえ微増という結果になっています。

バブル崩壊後の就職氷河期の中でも、特に大手金融機関の破綻が相次いだ97年ごろから資格取得が盛んになった時代と比較し、IT系のスタートアップ企業が増えるなど就職先の選択肢が増えたことも影響しているのかもしれません。

3つ目は、2つ目と矛盾するようですが不況により大学生が資格取得のために専門学校に通うダブルスクールブームが起こり、勉強に集中できる学生や若い世代の受験者が増えたこと。相対的に働きながら税理士資格取得を目指す人の合格比率が下がることにつながったのではと推測しています。

あくまでも私の経験則に基づく個人的意見ですが、かつて税理士資格は士業の中でも働きながら取得可能とされてきた資格でした。
某専門学校のHPでは、資格取得に必要な5科目の1年の勉強時間の目安として450時間×2600時間×1350時間+250時間で、5科目2100時間というモデルが示されています。

1回で5科目を合格する概算なので現実ではこれよりもっとかかりますが、例えば450時間かかる1科目を1日単位で考えれば、11時間少し勉強すればOKという計算になります。
同様に公認会計士の勉強時間の概算は1年で4000時間弱となっており、税理士の約2倍。110時間勉強しても年間3650時間ですから、働きながらの取得は難しいといえます。

つまり世の中の認識としては、税理士は働きながら取得できる資格というカテゴリーに入っているものの、実態としては若くて勉強に集中できる受験者が増えることで、現実的には働きながらの取得は難しくなっている。

実際、令和3年の科目合格者数の年齢別内訳を見ると、30歳以下が約半分を占めるという結果が出ています。簿記などの資格を取った上で、税理士事務所に入り、510年ほどかけて5科目取得し、独立するような従来のモデルは難しい時代になっているのかもしれません。

AI登場で税理士がいらなくなる――その未来予測が外れた背景

そもそもの理由として、かつてAI登場時になくなる業種の一つとして税理士が挙げられたように、“税理士=オワコン”のように捉えられたことも影響しているのかもしれません。

職業選択の幅が広がった今、「なくなる仕事」と予測される資格に、2000時間もの勉強時間をかけてまで挑戦する意義があるのか。そんなふうに考える人が増えても決して不思議なことではないでしょう。

こうした個人的な分析を踏まえ、だからこそとスタートさせたのが今回のプロジェクトです。

“税理士=オワコン”について書きましたが、独立前、税理士事務所に勤務していた際に、よく耳にしていたのが、税理士事務所は早晩なくなり、弁護士主導の総合事務所が台頭してくるという予測と、記帳代行のニーズはなくなるのでコンサルティングに力を入れるべきという説でした。しかし、この2ついずれも現実のものとはなっていません。

確かにクラウド会計ソフトの登場などにより、個人で記帳作業を行うハードルが下がっていると言われます。しかし、自身で記帳することを厭わない方がクラウド登場以前から一定数いたように、記帳作業が面倒だと考える人は今も相当数存在します。

当事務所に限っては記帳代行ニーズは減るどころか増加しているのが現状です。
むしろ、本業以外の面倒な作業はお金を払っても外部に任せ、本業に集中したいと合理的に考える傾向は以前より高まっているように思います。

税金の計算だけでなく、経営者の思いに寄り添える“プロ”を目指す

もちろん、事務所の大手化、就職者の大手志向が進むことは間違いないでしょうが、こうした傾向は、むしろ当事務所にとっては差別化をはかるチャンスとも捉えています。

私が志向する事務所経営のスタイルは、少人数精鋭でテクノロジーやツールを活用しながら省力化・効率化をはかる。そして、スタッフの業務量およびクライアント企業のフィーの適正化をいかに実現するかを重視しています。

大手事務所で働くスタッフのサラリーマン化が見られるに反し、クライアント企業に接するのは税理士資格を持ったプロフェッショナルに限定し、厳しい事業環境の変化にさらされる経営者の思いに寄り添い、お金の計算以外の相談業務にも力を入れています。

決まった業務をやればOKという事務所と違って、厳しい面もあるかもしれませんが、その分、クライアントである経営者と近い距離感で実践的に学べる部分は多いのではと自負しています。 

無論、「人を育てることはできない。できることは育てる環境を提供すること」というのが私の持論。ただ、環境を提供できる状況にある今、改めてこのプロジェクトに私自身も果敢に取り組んでいきたいと思います。

働いて生活資金を稼がなければならないという状況下にあって、志高く税理士試験の合格を目指す方、ぜひチャレンジをお待ちしています。
https://www.goshima-management.com/shiken/

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