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中小企業の問題点(後編) 人材投資を利益率アップにつなげるには

2013年04月15日

『中小企業の問題点(前編)』はこちら

中小企業がまず投資すべきは「人」

利益率を上げるためには、資金を「投資」に振り向け、さらに規模を広げた取引を行なったり、新たな分野に進出したりすることが肝要、ということを解説しました。
では、何に投資をするべきか。一般的に思いつくのは新しい機械を買うこと(=設備投資)や、新たな製品を開発する(=研究開発)などでしょうか。しかし、中小企業にとっては、経営の将来を担うべく、もっとも身近で重要な投資があります。それは「人を雇うこと」です。
実際に採用活動をしている経営者に聞くと「なかなか魅力的な人材が来てくれない」「実際に雇ってみたが、思っていたのとは違う結果になってしまった」という声が多く聞かれます。
では、こうした問題を是正するには何が必要なのでしょうか。あるいは、今の何を改善するべきなのでしょうか。

必要になってから採用をスタートしたのでは遅い!

中小企業の採用現場を見ていると、大抵は、「必要な時に必要なだけ人を雇う」というパターンがほとんどです。一見、必要な時に必要なだけというのはとても経済的なように思いますが、投資という観点からみると大きな落とし穴にもなりうるのです。
募集広告を出し、実際に何人かと面接をしてみると「この人にぜひ来て欲しい」という場合もあれば「この人はウチとはちょっと合わないかもしれないな」という場合もあります。就職・採用はお見合いのようなもの、とよく言われますが、必ずしも自社に合う人がすぐに来てくれるとは限りません。  
すると起こりがちなのが、ミスマッチです。人手が足りなくなってから採用をスタートすると、「もう時間をかけて多くの人を面接してみよう」という余裕がなくなります。「誰でもいいからとにかく人を入れよう」と採用してはみたもの……という結果に陥りがちなのです。
妥協せずに欲しい人材を採用するためには、ある程度の時間的な余裕が必要です。つまり、“必要な時に必要なだけ雇う”というのは効率的なようで、非常に非効率な結果を生み出しかねないのです。

あなたの会社の魅力を明言できますか?

また、採用を成功させるには、自社ならではのウリがきっちり打ち出せることが条件となります。入りたい会社の条件は、人それぞれでしょうが「給料がいい会社」「やりがいのある会社」「楽しく働ける職場」などが代表的なトップ3に挙げられるのではないでしょうか。
あなたの会社はどうでしょうか。給料や福利厚生といった部分ではどうしても大企業にはかなわないかもしれませんが、中小企業ならではの「やりがい」や「楽しさ」は規模の大きさに左右されないはずです。もう一度「自社のウリ」を見直してみましょう。大企業だけでなく、他の中小企業と比較しても、少しでも差別化をはかっていくことが重要なポイントです。

成長のためのシステム作りが大事

いくら、いい人材が採用できても、そこから伸びなければ能力は頭打ちです。
そこでポイントとなるのが、成長のためのシステム作りです。つまり、ある程度の競争やライバルの存在が必要となります。
ただし、中小企業においては、「出世競争がない」「同世代の人間が少ないためにライバルが作りにくい」というデメリットがつきまといます。これらの問題を克服するためには、完全な実力主義・出来高制とはいわないまでも、ある程度、競争を生むような仕組み作りが不可欠です。意識の高い一部の社員ではなく、全体の底上げを図ることにもつながります。
また、中小企業ではどうしても人手が足りないため、実際に仕事をしながらOJTで仕事を覚えていくシステムになりがちです。ですが、今後、定期的に人を採用する上では、外部の研修会社を利用するなどして、効率的に社員を育成していく仕組み作りも検討するべきだと思います。

給料アップを現実のものとするために

さて、中小企業の採用現場における一番の問題点が給与の問題です。中小企業の多くは社員の平均年収も低水準にあり、年齢が上がるごとに子供の教育費などの支出が増える一方、昇給もなく社員の生活設計は厳しいまま、となりがちです。このことが、中小企業の給料では長期的に生計を立てることが難しい→社員のモチベーションが上がらない→せっかく成長してきたと思った矢先に転職してしまう→また人を採用しなければならない、という負のスパイラルが生まれる原因になっています。
明日から社員の給料を上げる、というのは難しい話でしょう。しかし、生活設計ができるだけの給料を払うためにも、引いては利益率をアップしていかねばならない、という話に立ち戻るのです。

利益率アップが生み出す経営の好循環

「1にも2にも利益率を上げなければならない」。私がそう強く主張する理由がおわかりいただけたかと思います。
利益率が上がれば、社員に多くの給料を払うことができ、応募者の目にも魅力的な会社に映ります。さらに、人手に余裕があれば、採用に関しても時間的余裕が生まれ、しっかり社員を育成するための研修の時間を作ることも可能になります。それによってさらに売上げや利益率が上がれば……と好循環が生まれてくるのです。
現在の中小企業の一人当たりの粗利は600万円以下。これを1500万円まで引き上げることができれば社員、一人当たりの年収1千万も夢ではないのです。
簡単なことではないですが、まずは粗利1500万円という目標を掲げ、利益率を上げるにはどうしたらいいか。粗利を稼ぐためにはどうすればいいか。試行錯誤から始めてみることが大切な第一歩ではないでしょうか。

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