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中小企業の問題点(前編) 借入依存と低利益率の背景を探る

2013年04月08日

景気のいい話がチラホラ出てきたが…

昨年末からのアベノミクス効果により、株高円安、高級消費の活性化、賃上げなど、世間では景気のいい話がチラホラ聞かれるようになりました。もちろん悪いことではありませんが、では企業業績はどうなのか? というと、円安効果による業績押し上げや株高や不動産高による資産効果などの影響も強く、実態はそう大きく変わってはいないのではないでしょうか。
とくに中小企業においては、今年3月に中小企業金融円滑化法が期限を迎え、倒産に拍車がかかることを危惧する声もあります。これまでの景気対策を見てきても、大企業の不況対策が、エコカー減税、エコポイントのような直接売上に結びつく政策がメインである一方で、中小企業の不況対策は金融円滑化法のように、借り入れ・資金繰り対策がメインとなる傾向があります。
コレは諸刃の剣ともなりうるのではないか。私はそんなふうに思うのです。

会社の経営が赤字続きでうまくいっていない時には、経費削減や事業見直し、売上アップのために新規市場を探すなど、さまざまな方面から対策を練り、試行錯誤していくのが企業の本来の姿です。
しかし、実際にはこういった経営努力を抜きにして、国の制度を利用した借入に頼り、売上を補填するケースが圧倒的に多いのです。この不況=借入→好況=返済→不況=借入……というサイクルを続けていくうちに雪だるま式に借入が増えていき、大きな負債を抱えて倒産してしまう、というケースも珍しくありません。

借入に依存しがちな中小企業の実態

また、日本では中小企業、特に昔ながらの会社ほど借入が多く、自己資本比率が低い傾向にあります。
本来、借入は少ない自己資本にレバレッジをきかせてより多くの利益を稼ぐために行なうものであるのにも関わらず、利益率よりも借入利率の方が高いという会社も少なくありません。
日本の中小企業の利益率がまだまだ低いこと、誤った目的での借入が行われがちなこと、そして政策と現場の状況の不一致が、低自己資本比率の大きな要因だと思います。

正しい借入・誤った借入とは?

では、中小企業の借入における大事なポイントは何か。
まずは、余裕を持って毎月の支払いが行えるだけの手元資金を確保すること。そして手元の資金をいかに効率よく投資していくかが重要です。さらに、本来の借入のあるべき姿は、おもに後者の「投資」に重点が置かれるべきです。つまり、調達した資金を使い、以前より大規模の取引を行なったり、新たな分野に進出したりと、利益をさらに上げることを目的とするべきなのです。なぜなら利息以上の利益を得なければ、利息を含めた借入返済が不可能になってしまうからです。
しかし、実際には多くの中小企業で売上・利益の補填として借入が行われているのが現状です。借入により一時的に通帳残高が増えるため、本来手をつけるべき事業の見直しや経費削減が余計に遅れてしまう、という本末転倒ともいえる現象が起きているのです。

なぜ中小企業の利益率は低いのか

中小企業が、そもそも借入に依存してしまう根本的な要因には、利益率が非常に低い点が挙げられます。
日本の一部上場企業の経常利益率はおおよそ5%程度である一方、中小企業は1~3%と大企業の半分程度の水準が一般的です。そのため、黒字か赤字かはどうしても売上高に大きく左右されてしまいます。売上が増えてもあまり利益は上がらないのに対し、売上が減ると一気に固定費(人件費などの売上に関係なく必ず必要となる費用)が大きな負担になってしまう事態になりがちです。
こうした状況を打開するのは、何はともあれ利益率を上げることが先決です。利益率がアップすれば、好況時に資金を蓄えることが可能となり、不況時にも一気に資金繰りが苦しくなるような事態も回避できます。つまり、誤った借入に走らないための体制を作りあげることができるのです。
もちろん、利益率を上げるのは一朝一夕でできることではありません。どの経営者も利益率を上げたいと思いながらもなかなか実現できないという悩みを抱えていることも承知しています。
しかし、この先、中小企業が生き残っていくためには(もっといえば中小企業の経営者、従業員がハッピーになるには)この問題は避けて通れないのです。
 
中小企業の問題点(前編)では、中小企業の借入れと低利益率の背景について、税理士という立場から考えてみました。では、実際に利益率を上げるためにはどうすればいいのか。中小企業の問題点(後編)で考えてみたいと思います。

『中小企業の問題点(後編)』はこちら

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