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不況時の資産運用をどう考えるか 1

2009年02月17日

いまは投資スタートのチャンスなのか?

100年に1度と言われた金融危機の打撃は、09年に入ってより深刻さを増しています。景況感も悪化の途をたどっており、財布の紐を締める風潮は強まるばかり。その一方で、証券会社の新規口座開設の申し込みは増加しており、「そこまで株価が下がったならチャンス」と投資を始める気運も高まっているようです。
もちろん、いつが市場の底値かは誰にもわからないわけで、安易に大金をつぎ込むのはご法度。とはいえ、「怖いから投資は止めて預金だけにしよう」というわけにはいきません。日本が抱える多額の借金、少子高齢化などによる社会保障費の増加、年金財源を考えても、誰もが資産運用にイヤでも向き合わなければならないのです。

その意味では、ファイナンシャルプランナー(FP)と言われる資産運用のアドバイザーの存在意義がクローズアップされそうですが、実態は伴なっていないようです。私見ではありますが、世間で知られているFPの活動を見ても、相談業務だけで生計を立てている人は少なく、大抵はメディアへの露出や原稿執筆、金融商品の代理店業、セミナーの講師などが主たる活動になっているようです。

FPが相談業務だけで生計を立てられない理由

そもそもFP資格が発足したのは約10年前。日本にも、アメリカのようにお金のホームドクターが必要な時代が来るという触れ込みでした。じつは、私自身もその触れ込みに感化され、FP 資格を取得した口です。

しかし、FP はいまだホームドクターとして定着するに至っていません。結局、儲かったのは資格の胴元だけであり、“お金のホームドクターの時代到来”というシナリオは絵に描いた餅だったのでは、と思ってしまいます。せっかく苦労して取得した資格でしたが、私はほどなくFP協会を脱退しました(資格を維持するには結構な額の会費を払わなければなりません)。

私がFP資格を取得した理由のひとつに、いずれ税理士資格がなくなるという危機感がありました。法曹人口増の時代を迎え、弁護士の税理士業参入が加速化し、税理士より格上?と言われている弁護士に仕事を奪われるリスクがあると考えたのです。また、規制緩和で、現在独占業務である税務代理や税務相談の門戸が拡大され、資格自体に意味がなくなるという状況も想定しました。

そこで、事業の多角化のひとつとして、資産運用の顧問、いわゆる“FP業”の展開を考えたのです。現在も、FP協会自体は脱会しましたが、クライアントから相談を受けた際には、資産に関する相談に応じています。ただし、こうした相談業務がしっかりとした事業の柱になっているかというとまだおぼつかない状況です。他の税理士でも、“FP業”をビジネスとして成功させているケースは少ないでしょう。

資産運用ビジネスが根づかない2つの理由

なぜ日本では資産運用ビジネスがうまくいかないのか。その理由を自分なりに考えてみました。
理由その1 日本では、情報にお金を払う習慣がない
理由その2 資産をすべてさらけだせるほどの信頼が、相談を受ける側にない
理由その3 資産運用の経験がない(あるいは少ない)人が多い

1はどの業界でも言えることでしょう。以前、あるコンサルタントから聞いた話だと、コンサルティング料が提案書の枚数によってカウントされるとか。つまり、コンサル料の単価を提案書1枚1万円とし、40枚提案書を出せば40万円もらえるという計算です。もちろん、提案書40枚という数字と提案の良し悪しはほぼ関係ありません。しかし、目に見えるものには払う、見えない情報には払わないという傾向はいまだ強いのでしょう。
税務業務についても同様で、「決算書」という目に見えるものは重要視されるが、相談業務だけでお金をとるのは難しいというのが現実です。克服するのは非常に難しい問題といえます。

2については、保険や証券のセールスマンでも、クライアントの財産をすべて把握している人はほとんどいません。本来、財産を把握していないのに、株を買わせたり保険に入れたりするのは邪道なのでしょうが…。その点、私の立場だと、クライアントの社長の資産を把握することは難しくないというアドバンテージはあります。

3には、2つの側面があります。
ひとつは、相談を受ける側の問題。資産の相談だけでビジネスが成り立ちにくいため、イコール経験を積むチャンスが少ないという現実です。
2つ目は、相談する側、つまり一般の人に資産運用の知識がない。よって、資産運用といっても何から手をつけていいのかわからない人が多いようです。従来、資産運用といえば不動産投資(なぜなら戦後からバブル崩壊まで不動産は右肩上がりで、インフレに強かったから)というチョイスしかありませんでした。さらには、就職→結婚→家の購入→定年退職→退職金&年金の需給というライフスタイルで生活が成り立っていたことも大きな要素です。
資産のポートフォリオを組んだり、分散投資をしたり、といった投資の概念が定着するには時間がかかりそうです。

無論、私が投資のアドバイスをするといっても、08年の市場が露呈したように、投資に絶対の正解はありません。自分自身、つねにあらゆる金融商品を試している段階にあります。それでも、投資を始めて10年。ITバブルから今回のサブプラ問題などの場数を踏んで(身銭を削って損も重ね!)、多少経験値は上がってきたのではないかと考えています。

次回は、実際に自分自身の投資経験を踏まえ、資産運用の基本的考え方について記してみたいと思います。

『不況時の資産運用をどう考えるか 2』はこちら

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