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経営者にとっての「驕り」の功罪とは?

2012年07月31日

ユニクロが売上目標を5兆円に引き上げたワケ

一体、どこまでの高みを目指しているのか――「ユニクロ」を展開するファーストリテーリングの柳井正社長を見ていると、そんな思いに捉われてなりません。
かつて、柳井社長は2010年までに売上高1兆円達成という目標を掲げました。しかし、その目標達成間近にして、さらに目標を引き上げたのです。新たな目標は、2020年までに売上高5兆円、経常利益1兆円を達成すること。さすが、デカく出たという感じです。
企業として株主の利益のために常に成長を目指していくのは当然のことです。しかし、目標に対する彼の飽くことなき姿勢には、別の意味もあるように思います。国内で文句なしの“勝ち組企業”としてのポジションを手にしつつも、そこに安住しては次の成長がない。ここまでの成功をもって驕りでもしたら、世界市場でたちまちその鼻をへし折られてしまう。厳しい現実を見据えての、行動のように思えるのです。

規定路線に安住し、新規開拓を怠った社長の末路

そう。今回、言いたいのは驕りが持つ危うさです。何を隠そう、私自身も仕事が上手く行くと、ついつい調子に乗ってしまいがちな性格を自認しています。だからこそ、日々、自分をいましめています。少々のことで驕らないようにしよう、と。そう考えられるようになったのは、税理士という立場が幸いしています。驕りから生まれた慢心で身を潰したケースを少なからず見てきているからです。

例えばあるアパレル企業のケースです。その会社の強みは、大手取引先を手にしていたことでした。その規定路線に乗って仕事をこなしていけば安定した売上と利益を確保できる、そんな状況にあったのです。しかし、一社の大手取引先に頼っていると、失った際の反動が大きい。私自身、何度か新規開拓を促したのですが、人間、上手くいっているときは、なかなか他人の意見が耳に入らないもの。私が若かったせいもあるのか、何を言っても、どこかタカを括った様子でした。次第に仕事より遊びに目が行くようになり、更なる市場の開拓や経営改善の努力などには一切手をつけていませんでした。
ところが、ある時、その大手取引先が経営不振に陥ります。それと同時にバッサリと取引を切られてしまった。安定したビジネスモデルはあえなく崩れ、一気にその会社は傾いてしまうのです。

「驕ってはいけない=自信を持ってはいけない」ではない

無論、誰もがある程度は「驕っちゃいかん!」という自制心を持っているはずです。けれど、やはり人はついつい驕ってしまいがち。なぜなのでしょうか?

人は誰しも「他人に認められたい」感情を持っています。特に経営者になるような人にはその傾向が強い。人に認められれば自分に自信が持てる。それが次の努力、そして成功へと繋がっていく……。ここまではとても良いスパイラルなのですが、これを繰り返していくうちに人はだんだんと次の努力を怠ってしまう。自分に甘くなってしまう。これが驕りです。人間とは弱い動物です。右肩上がりが続いていると、ついつい「今のままでいいだろう」と思ってしまうのでしょう。

驕りとはかくも経営のガンともなりうる。ただし、ここが難しいところですが、闇雲に「驕ってはいけない」と自分を戒めてばかりいるのも褒められたことではない。「驕ってはいけない=自信を持ってはいけない」ではありません。成功とは紛れもない頑張りの結果です。だからこそ、成功したら、ある程度、自分をほめてもいい。時に「調子に乗る」ことも重要です。なぜなら、どんなに頑張っても調子が悪いとき、失敗続きの時もあるからです。成功した時にある程度、自信をつけておかないと、自己肯定感がいつまでたっても得られなくなる。ずっと気分は低空飛行のまま。それでは次の成功に繋げる原動力がなくなってしまいます。

常に新たな高い目標を設定し続ける

つまり、「驕り」と「自信」は紙一重。「人に認められたい」という気持ちを抑えることは難しいですし、何よりこれは成長に必要不可欠な要素です。特にビジネスの場では、自己満足ではなく「周り(社内・社外を問わず)にいかに評価されるか」が重要です。「人に認められたい」という気持ちこそが成功に近づくパワーになることも多いのです。

そこで、冒頭の話に戻るのですが……。驕らないために私が実践しているのが「常に新たな高い目標を作る」ということです。柳井社長もそのことを身を持って実践しているように思います。
重要なことは、決してある時点で満足し、停滞しないこと。「上を目指して初めて横ばい、現状維持を選んでしまうと下降していくのみ」とはよく言われること。変化のスピードが速い今は、特に下降するスピードもあっと言う間だと思います。

とはいえ、ずっと高い目標を持ち続けることはなかなか大変なことです。目標を作る→目標を達成する→自信がつく+新たな目標を作る→自信を原動力に新たな目標を達成する→……。働く限り、終わりのない作業を続けていかなければならない。
息切れしないためには、どう「驕り」と「自信」のバランスをとるのか。私自身もまだまだ模索中です。

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