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成功するこだわり・失敗するこだわり

2012年07月16日

Appleの創業者スティーブ・ジョブズが製品の細部にまで異常な「こだわり」を見せた、というのは有名な話です。ほかにも卓越したプレゼン能力やカリスマ性なども彼を後押ししたのでしょうが、「こだわり」は必要不可欠。成功者にはそんな「暗黙の方程式」があてはめられることが多いように思います。

例えば、その道で名を成した人を紹介するテレビ番組の「情熱大陸」や「ソロモン流」などでもそう。大抵、登場人物の仕事に対する「妥協のないこだわり」「尋常じゃないほどの執着心」といったものが紹介される。「だからこその成功!」と結論づける。そんなパターンが多いように思います。
きわめて単純化されたストーリーはテレビならではのものでしょう。“わかりやすい”し、納得感もある。一つのことにこだわり続けて努力する姿は確かに絵にもなります。
けれど、ビジネスの視点から見ると、「ホントにそうなのかな?」とクビを傾げたくなることも多々あるのです。「こだわる」ことこそが、成功の必要条件。そんな単純な方程式で言い切っていいんだろうか、と。

大抵の経営者は「こだわり」が強い。しかし…

例えば――
「私は本当に小さいころから洋服が大好きだったんです。だから、ここまで会社を大きくできたのもその延長線に過ぎない。やってきたことは、今も昔も変わりません。自分がいいと思う服をみんなに着てもらいたい。その一心で頑張り続けただけです。成功の秘訣を強いていえば、服に対する思いやこだわりが人より少し強かっただけ、でしょうか……」。
そんな成功のエピソードが語られたとします。

耳障りのいい話ではあります。けれど、意地悪な言い方に聞こえるかもしれませんが、
「洋服が好き」で「頑張っている」人は他にもたくさんいるでしょう。私のクライアントの中にも「何かが好き」で「頑張っている」社長さんは多い。というか、そんな熱い人が大半です。では、みなが上手くいっているかという、残念ながらそうとも言えない。ならば、「好きで頑張っている」&「こだわりに抜いた」人が上手くいく背景には、別の要素があるのではないか。そう考えるのが妥当だと思います。

「運」の要素を差し引く必要もアリ

まず。「こだわり」の話を展開する前に、身も蓋もないことを言ってしまうと……。テレビに出てくるような著名人の場合、予期せぬ成功、つまり「運」が後押ししてくれたケースも多いと思います。例えば、たまたま編集者の目に留まって雑誌に掲載された。あるいは、自社が地道に作り続けてきた製品が時代の流れに一致して大ヒットした、とか。

こうした「運」を勘違いして調子に乗ると、後でしっぺ返しを受けるようなこともありえます。あるいは「運」で成功した人のマネをしても、大抵は上手くいかない。成功者のエピソードを正しく判断するには、「運」の要素を差し引く必要があると思っています。

成功を導く「こだわり+α」の正体とは?

では、先に触れた成功者の「こだわり」の背景にあるものは何か、について考えてみましょう。
大前提として言っておきましょう。「こだわり」や「執着心」は必要不可欠です。「こだわった人が成功する」とは言えませんが、「成功者はこだわりをもっている」という方程式は正しい。つまり単に「こだわり」を持っているだけではダメで、「+α」の要素が必要だということです。
それは何か? というと、こだわりをビジネス(お金儲け)のベクトルに向ける力だと思います。

一つのことに徹底してこだわる姿勢は、ビジネスの「差別化」に繋がる大きな武器にもなりうるでしょう。しかし、それだけでは自己満足で終わりかねません。こだわり抜いた結果、実現した商品のすばらしさを世に伝え、認知してもらう。そこで始めてビジネスになりうるのです。
多くの成功する経営者、もしくはそのナンバー2には「こだわり+α」の才能が漏れなく備わっているように思います。

やりたい仕事・やりたくない仕事のバランスをとる

もう一つ、「こだわり」に関連してくる大事なポイントがあります。「やりたい仕事」と「やりたくない仕事」のバランスです。
「こだわり」も強すぎると善し悪しです。「自分の素晴らしいと思った商品しか売りたくない」とか、「どうしてもこの方法でしかやりたくない」。そんな偏ったゴリ押しの執着心は、時にビジネスのハードルになりえます。無論、ガンコに貫き通して成功できればハッピーです。けれど、固執しすぎて事業が立ち行かなくなってしまったのでは本末転倒です。

私は次のように考えています。ビジネスをやる上では、やりたい仕事が1割できればいい、と。理由としては、「こだわり」が認められるには、ある程度時間が必要なことも挙げられます。好きなことがすぐに花開けばいいですが、大抵はそうは上手くいかない。趣味でやるなら別ですが、いつヒットするかの見通しもないのでは困ります。赤字を出し続けながら事業を続けていくわけにもいきません。やりたい仕事を続けるためには、そして将来の投資のためにも、やりたくない仕事に時間やカネ、人を割くことは大事だと思います。

正しい「こだわり」は偶然をチャンスに変える

先に挙げた「運」を味方につけるために、付け加えたいことがあります。差し引いて考える必要があるとは書きましたが、「運」とは決して単なる“たなぼた”ではありません。
先の例で考えてみると、成功の大前提となる「こだわり」がなければ雑誌などのメディアに取り上げられることもないでしょう。長いスパンで時代の流れに一致することもないでしょう。
そして、当然ながら、事業として継続している期間が長ければ長いほど、そのような好機にめぐり合う可能性も高まります。

「執着心(こだわり)」を成功に結び付ける要因として、「ビジネスのベクトルに向ける力」と「仕事のバランス」の2つを紹介しました。これら3つは、どれか1つが欠けても上手くいかない。そう心得る必要がありそうです。
「商品やサービスには絶対的な自信がある」「こだわりはハンパない」。なのに「上手くいかない」。そんな方は、まずは自身のこだわりのあり方について再考してみてはいかがでしょうか。運を呼び込み、成功に近づくヒントが見つかるかもしれません。

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