「人を雇って気づいたこと」その2~受信力の大切さ~
2010年01月08日
税理士に求められるものとは?
前回のコラムで、「考える」ことの大切さについて書きました。プラスアルファのサービスを提供するためには、愚直に、そして貪欲に考え続けることが大切です。とはいえ、ひとりよがりな考えでは意味がありません。自己満足に陥らないために必要となるのがコミュニケーション力です。
ひと昔前なら、クライアント先で話すことは決まりきった税法の説明がメインでした。よって、他人とのコミュニケーションが得意でなくても問題はなかったと思います。ただし、前回でも触れたように、単純な税務関連業務なら、優秀なパソコンソフトが税理士に取って代わることも可能な時代が到来しています。
パソコンができないこと。そのひとつがコミュニケーションをはかることです。最近、新しくクライアントになった方々が、「前の税理士は話しにくかった」、「提案がなかった」といったセリフをよく口にします。そういった話を聞くに、私自身、クライアントとのコミュニケーションを重要視して仕事に取り組んできた結果が、少しずつ認められてきたことを実感しています。税理士に求められるものが確実に変容を遂げつつあるのです。
年上の経営者といかにコミュニケーションをはかるか
ただし、税理士業界のクライアントは基本的に会社の社長であり、しかも年上の方のほうが多いのが現状です。人生の先輩でもある年上の経営者となれば、コミュニケーションを円滑にはかることは簡単なことではありません。
私自身、会計事務所に勤め始めたころ、クライアント先で年上の社長相手に何を話そうか悩んだものです。何かいいアドバイスをしなければという強迫観念もあったように思います。いま考えたら、税法や会計の知識はあるとはいえ、そのクライアントの業界も社会の仕組みも何もわからないのですから、有用なアドバイスなんかできるわけがないのですが…。自分なりに一生懸命考えて提案しても、空振りに終わってしまう。そんな残念な思いも度々味わいました。
謙虚さを忘れてはいけない
こうした自分の経験を踏まえ、職員をクライアント先に同行させる際に、以下のようなことを話しています。
・とにかく社長の話を一言一句もらさないで聞くこと。社長の話は生きる教科書だ。
・社長の話、思いをどれだけ吸収できるかで、将来的に有用なアドバイスができるかどうかが決まってくる。
・何を感じ吸収するか? 今は発信する力よりも、受信する力が重要だ。
社長の話をただうなずいて聞いているだけではダメ。が、話を少し聞いただけで、わかったような錯覚に陥るのも、もっとダメです。
私たちに必要なのは秀逸な受信力――言いかえれば謙虚さということなのかもしれません。