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無理をしない

2007年06月26日

最近、クライアントから「社員が鬱になってしまって…」という話を聞くことがあります。事の詳細を聞いていて思うのは「無理をしすぎなのではないか?」「根を詰めすぎているのでは?」ということです。今回は、私が仕事をやるうえでのポリシーでもある「無理をしない」大切さについて書いてみたいと思います。

日産のV字回復の裏で…

先日、雑誌の『文藝春秋』でこんな記事を読みました。「日産ゴーン改革 挫折の内幕」というタイトルで、コミットメント(必達目標)経営でV字改革を果たしたゴーン改革が限界を迎えつつあるのではないかという取材レポートでした。
たとえば、厳しい経費削減が要求されるなか、ある工場では気温が零度近くの真冬でも暖房をつけなかった。そんなエピソードが、社員の家族のコメントで紹介されています。ダウンジャケットを着て、凍えながら残業を続けた女性社員たちは、風邪をこじらせ救急車で運ばれてしまう。まさに「女工哀史」さながらの光景、と同レポートの筆者はしるしています。
「暖房を切ってまで経費を削減しようとした責任者」、「ダウンジャケットを着てまで作業した社員」、「そんな様子を察知しながら仕事に行かせざるをえなかった家族」……三者三様の「無理」がそう長く続くわけはありません。
日産の業績が思わしくないこと、そしてメディアの寵児であったゴーン氏への批判的な声が増えていること、すべてがこうした大小の無理が重なっている結果といってもいいでしょう。昨今の例では、グッドウィルやNOVA。これらの会社も、無理な拡大路線がたたったといえます

無理な継続はほころびを生み出す

もちろん、事業を進めていくうえで、ときに負荷をかけてがんばる必要があることは言うまでもありません。しかし、企業は「継続していくこと」が前提です。無理な数値目標や行動目標を掲げ、実践したところでそれを継続していくことは不可能。「無理しすぎ」なのか、「可能な範囲でのがんばり」なのかの境界は「継続できるかどうか」にあります。逆に言えば、「無理な継続」は必ず何らかのほころびを生みだします。冒頭の、鬱になる社員の事例も、「無理」が生み出した負の産物といえるのではないでしょうか。

無理が空回りしたときに苦しみ

そういう私も、もともとは根を詰めて無理をするタイプでした。社会人デビューが遅かった分、会計事務所で働き始めて数年は、ガムシャラに突き進んでいました。そこでのがんばりが、自分の実力をつける一助になった点も否めません。ただ、うまくいっているときはいいのですが、無理が空回りしたときは、自分自身非常に苦しかった思い出があります。

無理がいい結果を生むのか?

自分を変えるきっかけとなったのは、独立したことでしょうか。自分のペースで仕事をするようになったことが大きかったと思います。無理をしてがむしゃらに仕事をすることが、果たしてクライアントのためになっているのか。独立して冷静にクライアントや自分の仕事のスタイルを見られるようなったとき、「無理ながんばり=善」ではないと気づいたのです。
無理をやめたら、不思議なもので周りがよく見えるようになりました。いま振り返るとそれまでは、どこか独善的な部分があったように思います。周りが見えるようになると、周囲の協力も得られやすくなりました。結果的に、仕事もうまく回るようになっています。

移ろいやすい時代に生き残るためには

「無理をしない」ことは、移ろいやすい時代だからこそ大事なスタンスともいえます。一時期、栄華を極めたIT企業がドン底に突き落とされ、ふるわなかった鉄鋼や商社が息を吹き返しているように、どんな企業・業界にも波があります。うまくいかない時期も、確実に事業を営み継続するために――自分が無理をしすぎていないか? をぜひ冷静な目で見直してみてください。

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