値付けのセンスと業務効率化を考える
2025年04月30日
当事務所では、「月額顧問料1万円・決算料10万円」から、顧問契約サービスを提供しています。現在、300社超あるクライアント企業のうち、2~3割ほどがこの1万円プランで、業界最安値レベルを実現しています(決算料なしの「U-25・若手起業家支援」顧問契約サービスも提供)。
といって、自分の身やスタッフの給料を削っているわけではなく、事務所の売上も右肩上がりで推移しています。
私以外のもう1人の税理士、3人の従業員の残業や休日出勤も実質ゼロで、遅くとも夕方17時には事務所は大抵誰もいなくなります。繁忙期といわれる年末調整・確定申告シーズンも例外ではありません。
こうした“ホワイト事務所化”ができている秘密こそが、徹底した業務効率化をはかっていることです。今回は、なぜ私が安価な顧問料を実現し、そのための業務効率化にこだわり続けるのか。
そのきっかけと経緯についてつづっていきます。
「税理士って必要なんですかね?」と言われて無力感に陥る
独立したばかりの20年前くらいでしょうか。クライアント企業の社員で、たまに飲みに行くなど、フランクなつき合いをしていたM君が独立しました。
「M、独立したんなら、顧問にしてよ」
と軽い気持ちで問いかけたところ、
「税理士って必要なんですかね? 税理士顧問料を毎月払うより、もし申告の不備があっても、追徴課税でも延滞税分を上乗せで払ったほうがトクじゃないですか」
と、言われたのです。
いわば自分の職業を否定されたようなものです。けれど、私は怒るわけでもなく、「やっぱりそうか」と無力感に陥ったのでした。
日本では申告納税制度をとっており、申告業務上、わからないことは税務署で質問することができます。
不備があれば修正申告が求められますが、それに従って手続きをすませば、よっぽど悪質でもない限り、多額の追徴課税を求められることもないでしょう。
ならば、毎月、顧問料を払って税理士を雇うより、何かあっても追徴課税を払うほうがいい。なんでも言い合える仲だからこそ吐露された、一部の経営者が感じている税理士のイメージをつきつけられた出来事でした。
「本当に必要な業務なのか」「毎月、訪問する必要があるのか」と考え直す
実は、税理士の存在意義について疑問を感じる兆候は、それ以前からありました。
当時は、独立したばかりでクライアント企業も少なく、「事業計画を立てましょう」「月次決算をきちんとやっていきましょう」「業務改善をしていきましょう」といった提案を積極的にしていました。
今は、若い経営者を始め、事業計画や月次決算に取り組むのは当たり前という考え方が定着しつつあります。しかし、当時は「そんなことやって売上が上がるの?」「そんなことよりいい節税策教えてよ」などと言われることも、少なからずありました。
それでも、コミュニケーションを密に取っていた数社とは、自分も参加して役員会を開いたり、月次決算や業務改善といった取り組みを実施するようになり、なんとなく自分の存在意義を肯定できるようになっていました。
それが、M君の言葉で、
「税理士って本当に必要なんだろうか」
「この業務は、本当にお客さんのためになっているんだろうか」
「そもそも毎月、訪問する必要があるんだろうか」
と、税理士の存在意義や、当たり前のようにやっていた1つひとつの業務のあり方を改めて考えるようになったのです。
「自分だったら払うのか」が値付けの基準となる
独立前にも疑問に感じることはたびたびありました。
当時、クライアントだった小さな会社は、毎月訪問して仕訳作業をしても、現地での作業は30分程度で終わってしまう。あとはとりとめもない雑談で時間をやり過ごし、帰ってくる。しっかり帳簿をつけてくれていても、業績は赤字です。いつも申し訳ないような気持ちを抱えていたことを覚えています。
無論、儲かっている企業ならば、いいかもしれません。しかし、中小企業の多くは赤字企業です。月額3万円でも年間36万円。そこに決算料10万円が加われば46万円。作業量やクライアント企業の業績への貢献度を考えると高すぎる。割に合うとは思えません。
私見ではありますが、税理士が、売上に貢献もしない、帳簿のつけ方や領収書の整理について、あれこれ助言したりするのもどうなのか。“仕事をしているアリバイづくり”ではないかと思ったりします。
もんもんと考え続けるなかで、もし自分が社長だとして「3万円払え」と言われたら、払うか。いや、絶対に払いたくない。この「自分だったら」というのが、いつしか私の値付けの基準となりました。
ただし、顧問料を下げるためには、サービスの質を落とさず、ムダをなくす業務の効率化を図っていく必要があります。
そこで生まれたのが、月額1万円、決算料10万円のインターネット限定「顧問契約サービス」でした。インターネット限定というのも当時は画期的だったと思います。
M君から顧問契約の話をあっさりフラれた時から5年を経た、2008年のことでした。
テクノロジーを活用した業務効率化を推進
現在は、コロナ禍を経たこともあり、事務所に来所いただくお客さま以外のクライアントについては、ほぼオンラインの打ち合わせで完了しています。社長も忙しいですし、税理士と売上につながらない時間を費やすより、よっぽど合理的です。
また、事務所内の業務についても、紙を使ったムダなアナログ作業を減らし、テクノロジーを活用しながら、徹底して効率化をはかっています。
クライアント企業に対しても、帳簿の間違いを指摘したり、「領収書は紙に時系列に貼って整理しましょう」といったムダなリクエストは一切しません。面倒な作業はこちらに回してもらって、クライアントには本業に集中してもらうことこそが、税理士の存在意義だと捉えています。
もちろん、ご要望があれば事業計画を一緒に考えることもありますし、しっかり時間を取ってとりとめもない相談に乗ることもあります。一緒に飲みに行ってグチを聞くこともあります。突発的なお客様の相談ニーズや、飛び込みの新規案件に対応するうえでも、ムダをなくすことを徹底しています。
また、1万円からスタートしたお客様も、事業の成長、売上によって、顧問料の適正な値上げはお願いしていますが、いただいても概ね月20万円くらいを目安にしています。
これまでの常識・ルーティンを疑ってみる
「自分なら喜んで払うか」、あるいは「これ以上の額はもらうべきではない」。
これが私が体感で身につけてきた値付けの感覚です。どんなビジネスでも値付けは難しい。センスが求められる分野でもありますが、自分自身に問うてみるのは有効な方法だと思います。
さまざまなモノの値段が上がり、値上げに踏み切るしかないといった業種業界もあるでしょう。しかし値上げにも限界はあります。
ならば、
「思い込みでやっていたムダな業務はないか」
「テクノロジーを使って効率化はできないのか」
と、ルーティンを見直し、業務効率化をはかってみる。
業績向上を実現するうえでは、これまでの常識・習慣を疑う視点も大事だと思います。
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